海外子会社からの利益還流
国際税務外国子会社を設立して海外進出してから数年たち留保利益が溜まってくると、その次に考えるべきは、海外子会社の留保利益を現地でそのまま投資にまわすか、それとも親会社へ利益還流するかです。
国境をまたいで利益還流する場合、源泉税をはじめ何らかの課税が生ずることが多いため、どのような利益還流方法が税務的にもっとも効率的かを検討することが重要です。
利益還流方法は主として配当金か利息になりますが、それらはそもそも海外子会社がどのように資金調達したかによって決まります。
つまり親会社から出資の形で資金提供を受ければ配当金として、融資の形で資金提供を受ければ利息として、利益還流をすることになりますので、海外子会社への資金提供の際には、将来の利益還流時の税務インパクトも見越したうえで、その方法を決定することが望ましいと言えます。
配当金による利益還流
海外子会社に出資の形で資金提供した場合、配当金により利益還流をすることになります。
日本親会社の所在地国である日本においては、海外子会社からの受取配当金は原則として95%が益金不算入になり、法人税は課されません。
他方、海外子会社の所在地国においては、配当支払時に源泉所得税が課される可能性があります。日本側で配当益金不算入となる場合、この源泉所得税は日本において外国税額控除の対象にはならないため、純粋な税務コストになります。
したがって、税務的な観点からは、配当源泉税の無いもしくは配当源泉税率の低い国の子会社から配当金を受け取るのが望ましいと言えます。
また、言うまでもないですが、配当を支払った海外子会社側では、支払配当は原則として損金算入はできません。
利息による利益還流
海外子会社に融資の形で資金提供した場合、受取利息によって利益還流をすることになります。
日本親会社の所在地国である日本においては、海外子会社からの受取利息は全額益金に算入され法人税が課されます。
他方、海外子会社の所在地国においては、支払利息は原則として損金算入されますが、利息の支払時に源泉所得税が課される可能性があります。その源泉所得税については日本親会社側で外国税額控除の対象になります。なお、過小資本税制などの利子控除制限の適用や、租の国独自の制度により、海外子会社側で支払利息が損金算入されないこともあるため、留意が必要です。
さらに、配当金の支払いとは異なり、グループ会社間の貸付金利は移転価格税制の対象となるため、利率は独立企業間価格の算定方法に則って設定することになります。
以上のように、配当金と利息それぞれにメリット・デメリットがあり、子会社の所在地国によっても課税のインパクトが異なってきますので、事案ごとに税務インパクトのシミュレーションを行う必要があります。また、子会社所在地国の税率が高い場合、日本親会社との間に中間持株会社を置くことにより、インパクトを変えることも可能です。
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