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外国子会社の清算 or 売却?

国際税務

外国子会社による海外事業運営が思うようにいかず低迷が続き、事業撤退を考えた場合、その方法として海外子会社の清算もしくは売却という2つの選択肢があります。

清算の場合は、特に途上国においては、解散から清算決了まで2~3年といった長期の年月がかかる場合があり、また清算に当たって多額の退職金や賠償金などの支払いを要求されたりするケースもあるなど、煩雑なプロセスを経る必要があります。ただ、自社の意思決定さえあれば単独で実行できるというメリットがあります。

一方、売却の場合は、単独では実行できず、相手つまり買い手がいなくては成り立たないので、買い手探しに労力を要し、見つからない場合もありますが、
他方で、買い手さえ見つかり条件交渉を経て合意が成立すれば、短期間で、かつ煩雑な手続きを経ずともスムーズに手仕舞うことができるというメリットがあります。

日本における親会社サイドの税務インパクトは、おおまかに次のとおりです。


海外子会社の清算の場合

外国子会社の清算に伴う清算損益は、税務上、みなし配当と株式譲渡損益に分解されます。

みなし配当は、外国子会社配当益金不算入制度によって95%免税となりますが(但し、一定の要件に該当する場合は、子会社株式簿価減額特例制度の対象となりますので、留意が必要です)、株式譲渡損益は、益金又は損金に算入されます。

このみなし配当と株式売却損益の金額については、事前に入念にシミュレーション計算をしてインパクトを確認しておくことが重要です。


海外子会社の売却の場合

日本親会社側で発生する株式売却益は全額益金算入つまり課税対象となります(逆に株式売却損が出れば、全額損金算入できます)。

海外子会社に多額の含み益がある場合には、事前に配当させて、外国子会社配当益金不算入制度を活用した上で売却することも1つの方法です(但し、一定の要件に該当する場合は、子会社株式簿価減額特例制度の対象となりますので、留意が必要です)。

なお、株式譲渡に伴い、日本だけでなく外国子会社の所在地国でも譲渡益課税がなされる場合がありますので、現地の株式譲渡益課税制度についても確認が必要です。