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特典制限条項 ~租税条約の濫用防止

租税条約

租税条約は原則として締約国の「居住者」がその適用を受けられるものです。
一般的には、締約国の居住者(法人又は個人)であれば何の制限もなくその者に適用されることになりますが、
租税条約の中には、居住者の要件を定めて、課税の減免という租税条約上の特典を受けられる者を一定の適格性を有する居住者に限るとする条約があります。

この条項を「特典制限条項」といい、特典制限条項が含まれる租税条約については、それに規定される要件を満たした居住者でない限り、租税条約の特典を享受することはできません。

これは、締約国以外の第三国の居住者が、本来は当該租税条約の特典を受けられないにもかかわらず、締約国所在のペーパーカンパニーを経由したりするなどして不当に租税条約の特典を得るような行為、つまり租税条約の濫用を防止するための規定です。

我が国では、2004年に発効した日米租税条約(改正)においてはじめてこの特典制限条項を導入し、以後、イギリス、フランス、オーストラリア、オランダ、スイス、ニュージーランド、ドイツ等、20以上の租税条約に特典制限条項を入れています。

この特典制限条項により適格者とされる者は、たとえば日米租税条約においては、次の者に限定されています。
(1)個人
(2)国、地方公共団体、中央銀行、特定の公益法人、年金基金
(3)上場企業及びその関連企業
(4)日本又は米国の適格居住者が一定の割合を保有する法人
(5)能動的事業活動基準を満たす法人
(6)税務当局が適格者と認定した法人


また、特典制限条項の内容は租税条約ごとに異なり、特典制限条項の対象となる恩典の範囲も異なっています。
たとえば日米租税条約のように租税条約に規定するすべての所得に対して特典制限条項が適用される場合もあれば、租税条約によって源泉地国免税とされる場合にのみ特典制限条項を満たす必要があるとする租税条約もあります。

特典制限条項が適用される場合は、租税条約に関する届出に「特典制限条項に関する付表(様式17)」を添付する必要がありますので、ご留意ください。