経済活動基準とは
外国子会社合算税制外国子会社合算税制とは、税負担の低い外国子会社を利用した租税回避行為を防止するために、外国子会社の実質的な活動によらない所得を、日本親会社の所得に合算して、日本で法人税を課税する制度です。
ただし、外国子会社に現地でのしっかりした活動実体がある場合には、所得全体の合算はなされません。この現地での活動実体があるかどうかの判定基準が、経済活動基準と呼ばれるもので、次の4つの要件から構成されています。
【経済活動基準】
- 事業基準
- 実体基準
- 管理支配基準
- 非関連者基準または所在地国基準
この4つの要件を一つでも満たさない場合、その対象となる事業年度の外国子会社の所得全体が、日本親会社の所得に合算されて日本の法人税が課税されます。他方、この4要件を全て満たす外国子会社については、所得全部の合算はなされないことになります。また、4つの要件を一つでも満たさない場合であっても、対象となる事業年度における外国子会社の租税負担割合が20%以上であれば合算は免除されます。
外国子会社合算税制には細かい制度がいろいろとありますが、まず、この経済活動基準を判定することが経理部での対応の第一歩となります。
事業基準
事業基準とは、外国子会社の主たる事業が、以下の事業のいずれにも該当しないことを求めるものです。
- 株式または債券の保有
- 工業所有権その他の技術に関する権利、または特別の技術による生産方式もしくはこれらに準ずるもの、もしくは著作権等の提供
- 船舶または航空機の貸付け
株式の保有業には統括業務を行う持株会社についての例外があるなど、これらの事業に該当してもいくつかの例外規定が置かれていますが、基本的には上記の事業に該当する場合は、この事業基準を満たさないことになります。
この基準の趣旨は、上記の事業はいずれも日本企業が日本でみずから行うことが可能なものであり、あえて外国に子会社を設けて行わせる積極的な経済合理性が見いだせない、ということです。
実体基準
実体基準とは、外国子会社が、その本店所在地国において、その主たる事業を行うために必要な事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していることを求めるものです。ここにいう固定施設は、自ら所有しているものに限られず、賃借も含まれます。
注意すべきは、単純に固定施設を何でもいいから保有または賃借していればいいわけではなく、その主たる事業を行うに必要十分な施設であるかどうか問題とされます。その主たる事業が営めるとは思えないほど規模が小さい固定施設であったりすると、実体基準を満たしているとは言い難いと判断されます。また、その主たる事業の業種・業態や活動内容にそぐわない固定施設である場合も、実体基準を満たしていないと判断されます。たとえば、人の活動を必要としないような金融資産の保有を主たる事業とする外国子会社が、たとえ形だけビルの一室を借りていたとしても、それは実体基準を満たしているとは言い難いといえます。
この基準の趣旨は、外国子会社がその本店所在地国に物理的な活動実体を備えているかどうかを確認するものです。
管理支配基準
管理支配基準とは、外国子会社が、その本店所在地国において、その主たる事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることを求めるものです。
管理支配基準の判定にあたっては、次のような諸要素を総合的に勘案したうえで、判定を行うこととされています。
- 本店所在地国での、株主総会及び取締役会等の開催
- 本店所在地国における、事業計画の策定等
- 本店所在地国における、役員等の職務の執行
- 会計帳簿等の作成やその保管が行われている場所
- その他の状況
たとえば、本店所在地国に固定施設があり従業員が働いているとしても、役員などの経営幹部は日本親会社を兼務して働いており、日本から遠隔で外国子会社の経営管理をしているような場合は、この基準を満たすことは困難と言えます。
この基準の趣旨は、外国子会社がその本店所在地国に、物理的実体だけでなく、経営的・機能的な活動実体を備えているかどうかを確認するものです。
非関連者基準又は所在地国基準
ここから先に説明する非関連者基準と所在地国基準は、外国子会社の主たる事業の業種に応じて、いずれか1つの基準を満たすことが要請されています。
非関連者基準が適用される業種は「卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業又は航空運送業、航空機貸付業」に限定されていて、
これ以外の業種を主たる事業とする外国子会社は、所在地国基準が適用されることになります。
非関連者基準
非関連者基準とは、外国子会社がその主たる事業を、主として関連会社以外の第三者との間で行っていることを求めるものです。
具体的には、業種ごとに具体的な判定基準が示されています。たとえば、卸売業であれば、外国子会社の各事業年度の棚卸資産売上高に占める第三者への売上高の割合が50%超、もしくは棚卸資産仕入高に占める第三者からの仕入高の割合が50%超といった基準になります。なお、この判定においては、企業グループの物流を統括する機能を持つ一定の外国子会社は例外とする規定が設けられています。
この基準の趣旨は、第三者との取引の多寡により、外国子会社の事業活動の独立性を判定するものです。
所在地国基準
所在地国基準とは、外国子会社がその主たる事業を、主としてその本店所在地国で行っていることを求めるものです。
たとえば、製造業であれば、その本店所在地国で製品の製造活動を行っているのか、不動産業であれば、その本店所在地国に所在する物件の売買や貸付けを行っているのか、といった観点から判断を行います。
この基準の趣旨は、外国子会社がその本店所在地国と密接に関連した事業活動を営んでいるか否かの観点から、外国子会社がその国で事業を行うことの経済合理性を判定するものです。
証明書類の保存
ここまでが経済活動基準の4要件の判定です。この4つの要件を判定するだけでも結構大変ですね。
しかしながら、判定をしたら終わり、ではありません。経済活動基準の4要件を満たすことを日本親会社が確認するだけでは足りず、各要件を満たしていることを証明する書類を日本親会社にて保存することが義務付けられています。
そして、税務当局からそれらの証明書類の提出を求められた場合には、指定された期日までに提出をしなければなりません。税務当局は、期日までに提出がないときは外国子会社が経済活動基準を満たさないものと推定して課税ができることとされています。
ある日突然税務当局から証明書類の提出を求められて慌てないように、毎期末には経済活動基準の判定とあわせて、判定結果を証明する書類の保存も忘れないようにしましょう。
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