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無形資産とロイヤリティ

国際税務

無形資産は今日の企業活動においてますます重要性を増していますが、無形資産の1つである特許権やノウハウ、商標権、著作権などの知的財産権を他社に使用許諾する場合、ライセンス契約(使用許諾契約)を結び、その対価としてロイヤリティを受け取ります。

この使用許諾につき国をまたいで国際的に行う場合、様々な国際税務の留意点が出てきます。

取引の性質の決定

知的財産権が関係する取引について、その対価の性質を税務上どうとらえるべきか、判断が難しいケースがあります。その対価がロイヤリティに該当するのか、それともサービスフィー(役務提供料)なのか。あるいは、対価がロイヤリティに該当するのか、それとも棚卸資産の販売収入なのか、等々。

たとえば、CM制作を外部に委託する場合の対価は、著作権の対価としてロイヤリティなのか、あるいは単なる制作役務の提供なのか。ソフトウエアの販売を行う場合、1回きりの物の販売として棚卸資産の販売収入に該当するのか、複製を許諾する条項が入っている場合はロイヤリティ収入なのか。

契約内容詳細も含め慎重な判断が必要な取引もありますので、留意が必要です。


ロイヤリティに対する源泉地国課税

取引対価がロイヤリティと判断された場合、次に論点になるのが、そのロイヤリティ所得の源泉地国の判定です。

ロイヤリティの所得源泉地国を判定する考え方として、使用地主義と債務者主義があります。使用地主義とは、ロイヤリティの源泉地国はその知的財産権を使用した場所(国)であるという考え方です。他方、債務者主義とは、ロイヤリティの源泉地国はロイヤリティの支払者が居住する場所(国)であるという考え方です。

日本の国内法では使用地主義の立場をとっており、知的財産権が日本国内で使用された場合は日本の国内源泉所得になると判断されます。しかしながら他方で、日本が締結した租税条約のほとんどは債務者主義を採っており、ロイヤリティの使用地にかかわらず、支払者が日本の居住者である場合に日本の国内源泉所得と判断されることになります(租税条約による源泉地国の修正)。

使用地主義を採用した場合は、その権利をどこで使用したかで判定するため、今日の複雑な企業活動の下ではその権利の使用地を判定するのは難しい場合がありますが、債務者主義を採用した場合は、ロイヤリティの支払者の居住地国をもとに判断すれば済むので、源泉地国の判定が容易になります。

源泉地国の判定が済んだら、次に源泉地国においてロイヤリティに対する源泉徴収がなされるのかどうか、なされる場合に租税条約で免税や軽減税率の適用が可能なのかどうかを確認します。そして免税や軽減税率の適用が可能な場合、届出書の提出などその適用を受けるために必要な手続きを行います。


居住地国での課税と外国税額控除

源泉地国での課税の有無を判定した後は、それを受け取る側の居住地国で課税がなされるのか、そしてロイヤリティ支払時に相手国の所得税が源泉徴収された場合、受け取った側の国で外国税額控除が可能なのかどうか、を確認することになります。


移転価格税制

ロイヤリティ取引が第三者との間ではなく国外関連者、つまり海外の子会社など企業グループ内での取引の場合には、ロイヤリティの金額について移転価格税制の対象となります。