海外出張者の給与所得 ~183日ルール
租税条約企業活動のグローバル化に伴い、多くの企業が世界各国で事業を展開し、日常的に自社の従業員を海外出張させています。そして、給与など勤務によって得る報酬に対する課税は、その報酬がどこの国から支払われようとも、勤務を行った国(源泉地国)に第一次課税権が生じます。
例えば、X国のA社に勤務する従業員aさんがY国に2週間出張して勤務した場合は、その2週間分の給与に対しては、勤務を行った場所であるY国に第一次課税権が生じます。つまり、年収のうちこの2週間分に該当する給与は現地で納税する必要が出てきます。
ただ、出張するたびに相手国で納税義務が生じてしまっては、実務上煩雑ですし、なにより国と国との間の経済活動や人的交流を阻害する要因になりかねません。
そこで租税条約では、いわゆる短期滞在者免税(183日ルール)という制度を置き、相手国での滞在日数が年間183日を超えないなど、以下の3つの要件(OECDモデル租税条約)を満たす場合には、出張先国での課税を免除する手当がなされています。
短期滞在者免税(いわゆる183日ルール)の3要件
1.当該課税年度において開始し、又は終了するいずれの12箇月の期間においても、報酬の受領者が当該他方の締約国内に滞在する期間が合計183日を超えないこと。
2.報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。
3.報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設によって負担されるものでないこと。
183日の数え方(暦年か、任意の12か月か)など租税条約によって若干の違いはありますが、どの租税条約にも概ね上記のような3つの要件が規定されています。
この要件を分かりやすく言えば、X国のA社に勤務する従業員aさんがY国に2週間出張して勤務した場合、出張先国であるY国での合計滞在日数が、当該年度において開始または終了する任意の12か月においても183日を超えず、かつ給与が全てX国のA社から支払われており、かつA社がY国に有する恒久的施設(支店など)によって負担させれてない、という状況であれば、出張先国であるY国では課税を免除されるということです。
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