個人に対する外国子会社合算税制の留意ポイント
2021.11.10
個人に対する外国子会社合算税制に関する規定は、法人に対するそれと同様の規定がほとんどですが、主に以下の点において異なる取扱いとなっています。つい法人も個人も同一の制度と思いこみがちですが、見逃すと影響額が高額にのぼることもあり、留意が必要です。
- 合算対象金額の計算における、一定の要件を満たす子会社からの配当等の控除の不適用
法人に対する外国子会社合算税制においては、外国関係会社が株式保有をしている場合に、当該外国関係会社の所得に一定の要件を満たす保有株式からの受取配当等が含まれる場合、当該受取配当は合算対象となる所得の金額から控除され、当該受取配当等は合算課税の対象にはなりません。
具体的には、外国関係会社が当該配当等の支払元法人の発行済株式総数の25%以上[1]を配当等支払義務確定日以前6か月以上保有している場合には、合算対象金額の算定において当該配当等の額は控除されます(措令39の15➀四)。
しかしながら、個人に対する外国子会社合算税制においてはこの取扱いはなく、外国関係会社が保有する当該要件を満たす株式から得た受取配当等は控除されずに、居住者の合算対象金額に含まれることになります。
- 外国税額控除等の不適用
法人に対する外国子会社合算税制においては、合算課税の対象となる外国関係会社の所得に外国法人税が課税されている場合には、二重課税排除のために外国税額控除の適用を受けることができます(措法66の7)。しかしながら、個人に対する外国子会社合算税制においては、合算課税の対象となる外国関係会社の所得に外国法人税が課税されている場合であっても、外国税額控除の適用を受けることができません。
また、法人に対する外国子会社合算税制においては、合算対象となる外国関係会社の所得に対して、日本の所得税、復興特別所得税及び法人税等が課されている場合にも、二重課税排除のために一定の税額控除の適用を受けることができます(措法66の7⑤)。しかしながら、個人に対する外国子会社合算税制においては、このような場合であっても当該税額控除の適用を受けることができません。
- 課税済み留保金額の配当に係る二重課税排除制度
外国子会社合算税制により日本で課税を受けた外国関係会社の留保利益(課税済み留保金額)を原資として支払われた配当に対して日本で課税を行うと、日本において同一の所得に対する二重課税が発生しますが、この二重課税を排除するため、課税済み留保利益を原資とする配当を受けた場合に、当該配当のうち一定の金額を所得から控除する制度が設けられています。
具体的には、内国法人については配当受領年度及び配当受領年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度において合算課税を受けた金額の合計額までを益金不算入とし(措法66の8、措令39の19)、居住者については配当受領年度及び配当受領年の前3年内の各年において合算課税を受けた金額の合計額までが、配当所得の金額から控除されます(措法40の5、措令25の23)。
法人に対する外国子会社合算税制においては、この益金不算入の対象となる配当の範囲は、➀配当を受領した事業年度において合算課税を受ける金額、及び②前期以前10年内に合算課税を受けた金額とされています(措法66の8④)。
しかしながら個人に対する外国子会社合算税制においては、配当所得の金額から控除できる範囲は、➀は同様ですが、②については前期以前3年内に合算課税を受けた金額とされており(措法40の5②)、二重課税の排除を受けられる過去事業年度の範囲が、法人株主の場合の10年と比べて大幅に短くなっています。
なお、内国法人については、合算課税の対象となった外国関係会社が外国子会社配当益金不算入制度 (法法23の2➀)の適用対象でもある場合には、受取配当等の額のうち95%は同制度によって二重課税が解消され、残りの5%部分について合算課税済み配当の益金不算入制度によって二重課税が解消されるよう手当てされています(措法66の8②)。
しかしながら、居住者については、法人税法上の制度である外国子会社配当益金不算入制度は適用されないため、二重課税の排除は全て課税済み配当の控除制度によることになります。
[1] より正確には、以下のいずれかの割合が25%以上であること。
- 他の法人の発行済株式等のうち、当該外国関係会社が保有する株式等の占める割合
- 他の法人の議決権のある発行済株式等の数のうち、当該外国関係会社が保有する当該株式等の数の占める割合
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